厳選された医学翻訳

世界に君臨していた「アメリカ投資銀行株式会社」、あるいは「アメリカ金融帝国」の象徴的存在だった5大投資銀行がなくなったのは大変な出来事で、一つの時代の終焉を意味しているといえます。 アメリカが世界をリードしてきた新自由主義という経済政策の考え方が、ここで役目を終えた。
そう考えると、感慨深いものがあります。 ただ、こうしてみるとなぜR・Bだけが救済されず、破綻してしまったのかという謎が残ります。
私自身もB・S、FとHが救済されたので、当然R・Bも救済されるだろうと思っていました。 世界の金融関係者のほとんどがそう感じていたと思います。
真相は、当事者のP財務長官か、B・BFRB議長に聞くしかないのかもしれません。 結局のところ、最後は企業の規模、体力だったというしかありません。
バブルが生じるときは、基本的にみんな同じことをやっているものです。 同じ投資モデルを立て、同じ住宅バブル、あるいは証券化商品ブームに乗り、同じように儲ける。

バブルがはじけるときは同じ理由で被害を受けますが、倒れ方は同じではなく、資本が十分になく体力の弱いところから破綻していくわけです。 1990年代の日本の金融危機のときに起きた銀行の再編でも、同じだったと思います。
日本に3行あった長期信用銀行のうち、N・T信用銀行、N・S信用銀行の2つは破綻し、一時国有化され、それぞれ普通銀行のS銀行、A銀行として再出発しました。 もう1行のN・K銀行は、F銀行、D・K銀行と合併。
再編されて、M銀行とMコーポレート銀行になりました。 こうした動きはアメリカでも繰り返されたのです。
いわば、「R・ショック」までがサブプライムローン問題の第1段階だといえます。 アメリカの金融危機に対処するシステムが十分ではなく、危機管理能力がないことがわかってしまったこと。
アメリカの5大投資銀行が消滅し、金融界の再編が進んでいるいまの状態は、今回の危機の第2段階と呼べるのではないかと思います。 とすると、実体経済への影響が本格化するのが、次の第3段階になってきます。
その見通しについては、のちの章で考えたいと思います。 「100年に1度起こるかどうかの深刻な金融危機だ」。
A・G前連邦準備制度理事会(FRB)議長は、「R・ショック」以前の2008年7月○日、米CNBCテレビに出演した際、サブブライムローン問題に伴う金融市場の混乱について、こう表現しました。 マーケットが動揺するなかでなされた発言であり、また、○年からいよいよ過熱していった住宅バブルの時期にFRB議長を務めていた当事者の言葉であり、きわめて重みのある発言です。
「100年に1度の危機」という文句は現在、さまざまなメディアが今回の世界金融危機を形容するときに、枕詞のごとく用いられるようになっています。 おそらく今回の世界金融危機は、この言葉とともに長らく記憶されることになるでしょう。

現状に対する認識として、100年に1度の金融危機だというのは、私もまったくその通りだと思います。 G・FRB前議長はこれだけの事態を引き起こした当事者の一人であり、大きな責任を持つ人物です。
彼だけにはこの発言をしてほしくなかった、というのが率直な私の気持ちです。 100年を遡って考えると、もっとも深刻な経済危機はご存じの通り、1929年から1933年ごろまで続いた、いわゆる「世界大恐慌」でした。
もっと遡るとイギリスの「大不況」(1873〜1896年)などがありますが、このときは個人消費も落ち込まず、その間の実質成長率は年平均で1.9%をキープしました。 それと比較すると大恐慌はわずか4年間で名目GDP(国内総生産)がほぼ半減し、実質GDPは3割減少しました。
失業率は○%にまで達したのです。 圧倒的に厳しい不況だったことがわかります。
むしろ、G前FRB議長が言っている本当の意味は、現在、○世紀の資本主義誕生以来の最大の危機が訪れているということだと解釈すべきです。 実体経済へ与える影響のことではありません。
私は、今回の世界金融危機が実体経済へ与える影響は大恐慌のときほどは大きくならないと思います。 当時は金融システムに対するセーフティネットがなく、多くの銀行が倒産し、預金も保護されませんでした。
また1931年には、保護関税法のスムート・ホーレイ法がアメリカで制定され、各国間で大きな転換期は1995年にありました。 この年、K政権下で就任したばかりのR・R財務長官は、強いドル政策を打ち出します。
実物経済の時代が終わり、金融経済の時代の幕開けを告げる出来事でした。 そのあと、急速に金融経済のグローバル化が進んでいきます(それについては第3章で詳しく解説します)。
世界の金融資産は、○年に○兆9000億ドルだったものが、ピークの2007年3月には187兆2000億ドルにまで達しました。 その後、株価が世界的に下落に転じ関税引き上げ競争が起きて、貿易量が大幅に縮んでしまったのです。

今回の危機が示しているのは、そういうことではなく、資本主義が抱えている構造自体が大きな問題ではないかということです。 この章では、その発端となったサブプライムローン問題について見ていきたいと思います。
○世紀に誕生した資本主義では、資本と国家と国民の三者の利害が、根本のところで一致していました。 ここでいう資本とは、各時代の中心的産業をイメージすれば、わかりやすいと思います。
例えば、自動車メーカーが大量の自動車をつくって販売し、経済活動を活発に行えば、アメリカ政府にとってはその分、税収が増えます。 政府がその税収を使って「大きな政府」として福祉政策を拡充していけば、国民はより幸せに暮らすことができます。
資本主義の始まりの時期においても同じだったと思います。 例えば、○から○世紀にかけてのイギリスでは、東インド会社がインドをはじめとするアジア地域から富を強奪してくればくるほど、国家としてのイギリスも潤い、イギリス国民の生活も豊かになりました。
そうした意味では、資本主義が誕生して以来、資本と国家との利害は一致していました。 1789年のフランス革命を経て、資本と国家に国民を加えた三者連合が形成されました。
1950年代、○年代にはGMにとってよいことはアメリカ(国家と国民)にとってよいことでした。 400年間、三者は仲良く手をつないで、いわば三人四脚で歩んできたといえるでしょう。
ところが、サブプライムローン問題は、資本が国家と国民に対して離縁状を叩きつけた象徴的な出来事でした。 サブプライムローンがつくられ、その証券化商品を売り買いしていた投資家たちは、自分たちの行為がアメリカの国家や国民にとって役に立つよいことであるとは思っていなかったでしょう。

問題が拡大したいま、そう感じているだろうというのではなく、サブプライムローン関連の証券化商品を取引している段階から、投資家たちにはわかっていたことだと思うのです。 返済できる可能性の低い人たちに融資をつける。
それを証券化して転売していけば、自分のところにはリスクは残らない。 残るのは儲けだけです。
資本側がとった行動は、資本と国家と国民の三位一体の関係に亀裂を入れるものでした。 「100年に1度の危機」というのは、確かにその通りでしょう。

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